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第7話
-記憶-
あれから何日経ったのだろうか。次第に少女の体力は限界にきていた。
休み休みながら歩いているものの、力のない幼い身体には負担が大きかった。
だが、ここで倒れるわけにはいかなかった。ここで倒れてしまったら獣達、いや同族達の餌にもなりかねない。
ふと少女は立ち止まった。隣にいる小さな獣が毛を逆立てている。
何かいる……??
少女はあたりを見回した。だが、誰もいなかった。
ただ目の前に飛んでいる蟲がざわついているだけだった。
そんな蟲達の羽を見て自分の飛べないことにコンプレックスを感じていた。
背中が痛い。自分の翼が蟲達の羽に感化されているような気もしていた。
「……」
「この蟲達は性質が悪いからね。油断していると心がやられるかもよ?」
ヒュームは向かってくる蟲達を薙ぎ払いながら答えた。
「わたしのこころ……?」
「そ。君にも心はあるでしょ? どんな者にだって心はある。例え幼くともね。捨てることなんてできないのさ。特に君はね」
「こころなんて……」
「とっくに捨ててる? でも君はまだ捨ててはいない。歪みはいずれ生まれてくる。いや、もう生まれてるのかな。だからこそ……」
「なに……?」
ヒュームは口を閉ざした。ベガヴァーチェ様もそのうちわかるよといつものように爽やかに笑いながら。
少女は地面に落ちた蟲を見つめた。それを手に取り、眺めていた。
始終少女の隣を離れない獣はその様子を見ている。
すると透明な羽が青白く光りだす。そしてその光は大きくなり少女を包み込んだ。思わず見惚れてしまうような綺麗な光に動けなかった。
「!? ベガ!! 早くその蟲を捨ててっ!!」
ヒュームは珍しく大声を荒く上げている。
不思議そうにヒュームを見つめるとそのまま意識が遠のいていったー
違うっ!僕はそんなんじゃないっ!!
一人佇んでいる少年。何かを叫んでいた。
覗いてるだけなら、楽しいだろうね……
君はそうやって楽な道を選ぶんだ……。いつもいつも……。
ー??
何を言っているのかわからなかった。そう、わかるはずもない。
少女は声をかけようと少年に近づいたが、触れることはかなわなかった。
冷たい風が頬をすり抜ける。ここには風があった。だが人はいない。独りになった孤独は誰にもわからない。いや、初めからずっと一人だったのか……。人が訪れては去っていく。どこに消えるのかは誰にもわからなかった。そう、だれにもわ・か・ら・な・かった……。
少女は起き上がり肩を震わせながら息を切らしていた。
傍らには心配そうに眺めている獣がいる。そしてヒュームは何かを唱えていたようにもみえた。
呪文……??
「だから言ったでしょ? 心がやられるって……」
こころがやられた……??わたしの……??
喋ろうと思ったが、まだ上手く話すことはできなかった。
「性質が悪いんだよ。あの蟲達は心を乱す。彼らはただ生きているだけだから、刺激が欲しいのさ。彼らには心がないからね。悪魔の持っている感情を好むんだ」
悪魔の持ってる感情なんて……。
「そ。面白くも何ともないのにね?彷徨ってる魂の方がよっぽど楽しい」
そう、言葉にしたヒュームはどこか寂しそうだった。少女は俯いた。それにしてもあの風景、以前見た夢と同じだったような気がした。あれは……、どこなのだろう。
そしてあの少年は一体……??
*
飛びまわる大群。それはある者のもとへ帰っていく。彼らは密集し数を減らしていく。そして孵るまた大群。空を染める黒と緑の混合色は面白い。彼らはひとつのことを目標として飛び回ってる。数を増やし続けるそれに顔を顰(しか)め焼き払った。
充満する異臭とともに発する記憶。記憶と共に落ちていく者達。どれも求めていたものではなかった。傍にいた塊を握りつぶし、身を翻し闇の中へ消えて行った―。
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第7話
-記憶-
あれから何日経ったのだろうか。次第に少女の体力は限界にきていた。
休み休みながら歩いているものの、力のない幼い身体には負担が大きかった。
だが、ここで倒れるわけにはいかなかった。ここで倒れてしまったら獣達、いや同族達の餌にもなりかねない。
ふと少女は立ち止まった。隣にいる小さな獣が毛を逆立てている。
何かいる……??
少女はあたりを見回した。だが、誰もいなかった。
ただ目の前に飛んでいる蟲がざわついているだけだった。
そんな蟲達の羽を見て自分の飛べないことにコンプレックスを感じていた。
背中が痛い。自分の翼が蟲達の羽に感化されているような気もしていた。
「……」
「この蟲達は性質が悪いからね。油断していると心がやられるかもよ?」
ヒュームは向かってくる蟲達を薙ぎ払いながら答えた。
「わたしのこころ……?」
「そ。君にも心はあるでしょ? どんな者にだって心はある。例え幼くともね。捨てることなんてできないのさ。特に君はね」
「こころなんて……」
「とっくに捨ててる? でも君はまだ捨ててはいない。歪みはいずれ生まれてくる。いや、もう生まれてるのかな。だからこそ……」
「なに……?」
ヒュームは口を閉ざした。ベガヴァーチェ様もそのうちわかるよといつものように爽やかに笑いながら。
少女は地面に落ちた蟲を見つめた。それを手に取り、眺めていた。
始終少女の隣を離れない獣はその様子を見ている。
すると透明な羽が青白く光りだす。そしてその光は大きくなり少女を包み込んだ。思わず見惚れてしまうような綺麗な光に動けなかった。
「!? ベガ!! 早くその蟲を捨ててっ!!」
ヒュームは珍しく大声を荒く上げている。
不思議そうにヒュームを見つめるとそのまま意識が遠のいていったー
違うっ!僕はそんなんじゃないっ!!
一人佇んでいる少年。何かを叫んでいた。
覗いてるだけなら、楽しいだろうね……
君はそうやって楽な道を選ぶんだ……。いつもいつも……。
ー??
何を言っているのかわからなかった。そう、わかるはずもない。
少女は声をかけようと少年に近づいたが、触れることはかなわなかった。
冷たい風が頬をすり抜ける。ここには風があった。だが人はいない。独りになった孤独は誰にもわからない。いや、初めからずっと一人だったのか……。人が訪れては去っていく。どこに消えるのかは誰にもわからなかった。そう、だれにもわ・か・ら・な・かった……。
少女は起き上がり肩を震わせながら息を切らしていた。
傍らには心配そうに眺めている獣がいる。そしてヒュームは何かを唱えていたようにもみえた。
呪文……??
「だから言ったでしょ? 心がやられるって……」
こころがやられた……??わたしの……??
喋ろうと思ったが、まだ上手く話すことはできなかった。
「性質が悪いんだよ。あの蟲達は心を乱す。彼らはただ生きているだけだから、刺激が欲しいのさ。彼らには心がないからね。悪魔の持っている感情を好むんだ」
悪魔の持ってる感情なんて……。
「そ。面白くも何ともないのにね?彷徨ってる魂の方がよっぽど楽しい」
そう、言葉にしたヒュームはどこか寂しそうだった。少女は俯いた。それにしてもあの風景、以前見た夢と同じだったような気がした。あれは……、どこなのだろう。
そしてあの少年は一体……??
*
飛びまわる大群。それはある者のもとへ帰っていく。彼らは密集し数を減らしていく。そして孵るまた大群。空を染める黒と緑の混合色は面白い。彼らはひとつのことを目標として飛び回ってる。数を増やし続けるそれに顔を顰(しか)め焼き払った。
充満する異臭とともに発する記憶。記憶と共に落ちていく者達。どれも求めていたものではなかった。傍にいた塊を握りつぶし、身を翻し闇の中へ消えて行った―。