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ohne sein Empfindung -想い- 第6話

Posted by チカ on 31.2008 *Roman(小説)* -煉樺-   0 comments
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第6話
-形骸-

 歩く先は同じような風景ばかりだった。行けども辺りは薄暗い。
その先に見えるものはなんなのか少女には想像がつかなかった。ただひたすら歩くしかなかった。
この小さな魔獣と共に……。
「何か言いたげだよね。何??」
 少女は黙っている。男を疑っているわけではない。いや、そもそも信用しているわけでもなかった。
 だが自分の行き先が決まっている以上進まないわけにはいかなかった。
「楽園には何があるか気になる??別に何もなくてもいいんじゃない。君が住めるだけでそれ以上は何もいらないと思うよ。それとも……、元いた場所の方がよかった?」
 その言葉には今更?という皮肉っぽい意味が混ざっていた。少女は首を振った。
どこが自分の居場所なのかそれは自分にはわからない。
だが、自分が囚われていたあの城に留まっていたいとも思わなかった。
魔獣を抱き抱え少女は薄暗い空を見上げた。

 どれくらいの時間(とき)が経ったのだろう。少女が眠りから目を覚ますと男はいなかった。
ベガヴァーチェは辺りを見渡す。だが男の気配はない。静まり返った殺風景な場所に差し込む少し明るい光。頬に感じる生暖かい風。心地いい風ではないものの少々感傷にひたるものがある。
少女は立ち上がりその場を離れた。
こんなことは何回もあった。あの残虐な悪魔、バルベリトの城から自分を連れ出してくれたヒュームという男は四六時中一緒にガトリーミルデンを目指して歩いているわけではなかった。
時折姿を消しては思い出したように現れる。一体何をやっているか少女には検討がつかなかった。
ただ目指す場所を聞いてそこに向かって歩くだけだ。少女が歩き始めると、少女の傍らにいた獣が身を震わせた。
まさか……。少女も身を固める。見つめた先には同族同士が諍いを起こしていた。
いや諍いとう可愛いものではない。あれは狩りだ。誰が誰を狩るか、自分の獲物について言い争っている。逃げ回る者達。追い掛け回す者達。あれらは自分と同じ生き物……。
少女は以前の自分を思い出していた。そんな余裕はない。自分には何も出来ない。
何も出来ない……、何も。何も……、少女は心を閉ざした。

 ベガヴァーチェはふとヒュームの言葉を思い出した。
面白そうだから手を貸す……、そんなことを言っていたのはいつのことだったか。
あの男も自分のあの状態を目にしていたのだろうか。
「面白くもなんともないのに……」
 ぽつりと呟いたベガヴァーチェの言葉を聞いていたのか否かヒュームは現れる。
「面白いさっ! 王の娘の手助けをしてあの冷酷悪魔のバルベリトの邪魔をするっ。バレたら即僕も殺されるのかなぁ~? あはっははは!! あいつの悔しがる顔を想像するだけで愉快だっ!」
 薄暗い木々の隙間から声がした。気配を感じさせることもなく現れる。
そう、この男に会った時からそうだった。
あいつ……。多分このヒュームという男はバルベリトと顔見知りなのだろう。部下というわけでも下僕にも見えない。少女は笑顔を絶やさないこの男に少々興味を持った。
「知り合いなの?」
「知り合い……?? まさかっ! 知り合いにもなりたくないよ。さて、僕のことなんてどうでもいいんだよv問題は君。早く歩かないとまた追っ手に捕まっちゃうかもよ~??」
「……捉まるのはもう嫌だ」
 もう嫌だ……。か細い声で呟いた。目指す楽園には自分が求めるものがあるのだろうか?
力がなくても何者にも怯えず過ごすことが出来る??では他の力なき悪魔たちも目指すことが出来たなら。さっきの光景を見ずにすむ?

―それは無理だよ。ベガヴァーチェ様

え……?声はヒュームのものではなかった。どこからか頭に響いてきた。
誰……??辺りを見渡すもののその声らしき人物はいなかった。
少女の傍らに身を寄せていた獣が甘えたような声を出した。
まさか……ね。獣が言葉を話す。ありえない話でもないが、その考えを否定した。



 蒼く長い階段。壁は銅と金で装飾されている。
自分はあまり金は好きではないが、この殺風景な配色がまた心地いい。
だがそんな心地よさを感じたのもつかの間、進む道を邪魔をするかのように影達がやってきた。
影達が個々に騒いでいる。その影達を簡単に薙ぎ払い進んでいった。
辿り着いた扉の向こうには黒に近い銀色の髪を持つ色素の薄い男がいた。
「お久しぶりですね。王」
 そう王に向かって軽くお辞儀をした男は、聡明そうな目をした青い髪青い目をした若い青年だった。
「呼んだ覚えはないが」
「わかってますよ。王のプライベートルームには誰も入れませんから」
「用件は?」
「ベガが攫われたと」
「報告は受けている」
「そのままにしておくつもりですか?」
「助ける必要はない。あの娘は……」
「貴方の娘だからですか?」
 青年は王の言葉を制した。そして壁にもたれかかった。
「悪魔の子供にしては珍しく純粋で白く穢れのない娘。今までにだって王である貴方が庇っていたのでしょう?」
 王は喋らない。青年を見るだけだった。
 青年は王の意図を察した。
「そうですね。すべては貴方の指示通りだ。ベガがバルベリトの下にいたのも、成長しないのも」
「順調なのか?」
「聞くまでもないでしょう。ベガは連れ戻しますよ。その頃には貴方の期待通りの悪魔になっていることでしょう」
 青年は恭しく頭を下げ、部屋を出て行った。



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