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ohne sein Empfindung -想い-  第4話

Posted by チカ on 07.2007 *Roman(小説)* -煉樺-   2 comments
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第4話
-空虚-

「はぁはぁはぁっ」
 少女は走り出していた。狙われているという恐怖もあった。捕まったら殺されるかもしれない。
しかし持っている漆黒の翼は役目を果たせないでいた。飛べないというリスクを抱え、ひたすら走る。
だが、幼く短い自分の足ではすぐに追いつかれることをわかっていた。
それでも逃げなければならない。あんな場所、自分が生きているという実感さえも感じないのだから。
 そして走り続ける少女の足にも限界があった。道は走りやすい場所ばかりではなく土壌はぬかるんでいる。
周りは大小の岩石ばかりだった。次第に足はもつれ少女は転んだ。
少女は小さな声を上げた。
追いかけまわしていた羽のある使い魔達は少女の周りを囲んだ。げらげらと下品な声を立て笑う使い魔達。
少女は腕を掴まれ、ひきづり回され玩具のように傷つけられる。深い傷はつけられることはないものの、その苦痛は尋常ではなかった。幼い身体が耐えられるはずもなかった。

 翌日、いつの間にか怪我の手当てはしてあり、白い包帯は少し血で滲んでいる。
少女はその包帯をほどき、まだ癒えぬ傷を見つめた。
ここは力あるものだけが生き残れる世界。悪魔としての能力がない自分がこの世界で生き残ることは無理なのかもしれない。そう、少女は悟った……。

「逃げる……」
「そ。だって君さ、いつまでもこんなところにいてつまんないっしょ?捕らわれのお姫様って言えば聞こえはいいかもしれないけどさ。でも君、悲劇のヒロイン役って似合わないと思うんだよね。それともこのまま死を待ってるの?じゃあ、さっさと死んじゃいなよ。誰かに殺されるよりそっちの方がいいと思わない?あーんなヤツに殺されるよかマシだしね。僕ならそうするよ、きっと」
 数日前からこの牢に出入りし始めた男は少女にここから脱出することを勧めていた。何者かも分からない。唯の使い魔にしては風貌が少々違っている。しかし他の悪魔公爵達とは違っているようにもみえる。他の悪魔にはいない灰色の瞳にどこか人懐っこい笑顔をしている。男はベッドの脇に置いてあったパンに手を伸ばしかじりはじめた。
「死ぬ……」
 捕らわれのお姫様。確かにそうだ。自分は何もしないで諦めてただ殺されるのを待っている。
これまで何度逃亡して捕まったことだろう。その度に使い魔をよこされ遊ばれる。そして捕らえられた後は使い魔は殺され、自分の心は痛む。その繰り返しだ。いつから諦めたのだろうか?始めからだったのか、もうそれすらもわからない。この悪夢を終りにしたいのなら、自ら終りにすればいい。
「あーあー、ちょっと真面目に考えないでよ~。言ってみただけなんだからさ。ごめんっ。僕が悪かったって。とにかくさぁ、ここではないどこかに行って、君一人で過ごせばいいじゃない」
「……」
 男は大げさに手を広げる。
「ベガヴァーチェ様は聞いたことない?ガトリーミルデンの楽園のことを。常春でここなんかよりとっても過ごしやすい場所。僕らはそんなとこいけやしないんだけどね。君ならいけるでしょ? きっと」
 男はニッと笑い、ベガヴァーチェの頭を撫で牢を去っていった。
 ガトリーミルデン……、何かの書物で読んだことがある。選ばれた悪魔のみが住める楽園。しかし王と呼ばれている父ですらその楽園に住んでいないというのに、自分がいけるのだろうか。
不安はあるもののその怪しい男の言葉を信じるしかなかった。自分の居場所はここにはないのだから。それにあの男はこれまでの使い魔達とは違っていた。どちらにせよ、自分には逃げるしか道はなかった。

 その日の夜、少女の意思を察してか否か男はやってきた。
「決心したようだね?」
 コクリと少女は頷く。男は満足気に笑みを浮かべた。
「よろしい。じゃ、僕に着いて来なよ」
 男が何者なのか名前を聞いても答えなかった。少女は黙って後を着いて行く。
「僕が何者か気になる?まぁ、安心しなよ。味方でもないけど、敵でもないからさ。ベガヴァーチェ様の脱出の手助けをしてるのは単なる暇つぶしだしね……。だから恩にきることないよ?僕、名前あまり明かしたくないんだよね。ほら、名前で殺されることってあるでしょ?だからさ。まぁ、必要ならジョージとかエドワードとかアーサーとかトーマスとか・・・」
 次々と名前を続けていくうちに少女は笑い出した。
「ふ……、ふふ。なんか人間の名前みたい」
「なんだ、笑えるんじゃん。ならいいや」
 ……??自分が感情があることがこの男にとって必要なことだったのだろうか?
 不思議に思いつつも歩き続けた。
「まぁ、ヒュームとでも呼んでよ。名前なんて本当はどうでもいいけどね……」

 ……おかしい。自分があの牢から逃げ出したことなどあの男に知れ渡ってるはず。
しかし、数日たっても追っ手はやってこなかった。ヒュームに尋ねても笑顔ではぐらかされるばかりだった。
「いいじゃない。楽でさ。それともなに? 追っ手に絡まれて一戦やりたいの? ベガヴァーチェ様が戦えないんだったら僕が戦うしかないんだよね。僕にそんなことやらせるわけ?」
「そういうわけじゃないけど……」
 ベガヴァーチェは口ごもった。歩く道は瓦礫の山ばかり。だがあの腐臭のする屍をみないだけでも少女は救われていた。少女が目指すところはガトリーミルデン、目指すはその上層だった。
長く続く道。途方もない旅。頼りはこの前を歩いている男のみ。心なしか少女に歩幅を合わせているようにも思える。

 ……?
 ヒュームが足を止めた。手を制し、距離を置いている。追っ手だろうか……??
途端いきなり黒い物が少女の頬を掠った。頬には血が滴っていた。
少女は声をあげない。こういう場には慣れているからだろうか、声を発しなかった。
生き物は間合いをとってこちらを見ている。二人は動かなかった。様子をみているようにも思える。
敵意の眼差しで喉を鳴らしていた。
「……殺さないの?」
 少女は問う。その生き物は尻尾が長く、風で鬣が揺れており瞳は赤い。少女より二周りも大きく、成獣のようだった。ここには魔獣がたくさんいるが、目の前にいる獣はみたことない生き物だった。
「殺して欲しいの?」
「ううん……。でも、殺されるならやらないといけない。わたしには目指すところがあるから……」
「そうだね。君は自分のために生きないといけないよ。誰のためでもなくね」
 男は獣の方を見つめ、手をかざした。それを無心に見つめるベガヴァーチェ。
 すると男はその手を下げ少女に言った。
「僕、面倒なことは嫌なんだよね。君がやってよ」
「わたし……?」
「そ。もともと君の問題なんだからさ」
 誰かに助けてもらおうなどと思ってもいなかったが、少しは期待していたのかもしれない。敵意をもったままの瞳でこちらを見続けている獣を見て、近寄った。獣はより高ぶらせ喉を強く鳴らす。今にも飛び掛ろうとしている体勢に少女はまた一歩近づいた。
殺す……、そう殺すんだ。
こいつは自分の邪魔になる。
少女は一歩一歩近づく。少女の手にはナイフがあった。
途端獣は少女に襲い掛かる!目の前にキラリと光るものが見えた。抉り取られる物を想像しながら、瞬きもしないで見つめていた。


ヒュームくん(?)謎キャラです。灰色の目…(;´∩`)思い当たらない。。。
煉華ちゃん、無事に逃げられるのでせうか?!(どきどき)
2007.12.08 22:31 | URL | 冰胡桃 #79D/WHSg [edit]
胡桃サン。
グレーの目のヒトは全くの新キャラなんですよv
煉樺は無事に逃げられることが出来るんでしょうか??
2007.12.09 22:25 | URL | チカ #79D/WHSg [edit]


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